History / 15th
第15回名古屋学生演劇祭
第15回名古屋学生演劇祭は下記の日程で開催予定です。
【開催日程】
9月5日(土)11:00~ Aブロック予選
15:00~ Bブロック予選
18:30~Cブロック予選
9月6日(日)11:00~ Bブロック予選
15:00~ Cブロック予選
18:30~Aブロック予選
9月7日(月) 15:00~ 決勝ブロック
【参加団体】
Aブロック
劇団メリメロの匣
おかし企画
劇団やるせない
Bブロック
劇団翔~KAKERU~
中京大学劇団いかづち
劇団jobless
Cブロック
ユメツヅキ
劇団はまなつ
調理部
【会場】うりんこ劇場
〒465-0018 愛知県名古屋市名東区八前1丁目112

参加団体
Aブロック

劇団メリメロの匣
お騒がせします。つい最近旗揚げしたばかりの代表2人がやりたい演劇をする劇団メリメロの匣です。やるものはその時々…。シリアスからなんでもしています!
Bブロック

劇団翔~KAKERU~
愛知県立大学の学生で構成された劇団。
新しい仲間と共につくり上げる舞台。全身全霊で翔けていきます!
Cブロック

ユメツヅキ
劇団眠れない夜のポニーテールの國江が設立した団体という企画というか。ふわっとしてますが、そんなところです。
皆様に楽しんでいただける作品をお届けします。よろしくお願いします。

おかし企画
うまい、とは言わないんですよ
りくつじゃないので、
んまい!
これです
感じろ! 客席で
謝れ! 舞台で

中京大学劇団いかづち
中京大学文化会に所属する劇団。【いかずち】ではなく【いかづち】である。
目指すは全国!今の私たちの全力を尽くして「演劇」します!

劇団はまなつ
静岡大学浜松キャンパスの演劇サークル、劇団Tipsから参加させていただきます!
貴重な名古屋での演劇体験、全力で楽しみます!

劇団やるせない
岐阜発の劇団。コロナで演劇ができなかったやるせなさを胸に、演劇に挑み続ける。ジャンル問わずなんでも出来る劇団を目指して、岐阜県・愛知県を中心に活動を続ける。

劇団jobless
2024年発足。
名古屋を拠点に活動する、大学生主体の劇団。

調理部
部活「調理部」です。
闇雲に調理し続けて2年。そろそろ新しいことをやってみたいです。別に調理以外でもなんでも。
調理部です。猪突猛進で調理します。
審査員

西尾武
(妄烈キネマレコード)
妄烈キネマレコード代表、演出家、脚本家、ときどき俳優。日本演出者協会会員。
妄烈キネマレコード旗揚げ以降、現代社会が抱える葛藤や苦悩、感覚などを等身大の目線で切り取る作品を創作している。

新宮虎太朗
(喜劇のヒロイン)
1998年生まれ。劇作家。演出家。
名古屋・東京で活動する「喜劇のヒロイン」共同主宰。2017年に第3回全国学生演劇祭観客賞受賞。
近年は第31回劇作家協会新人戯曲賞佳作選出。コミカルな作劇が特徴。

真臼ねづみ(うめめ)
三重県出身、名古屋在住。劇作家、演出家、俳優。2015年にユニット『うめめ』を旗揚げ。
どこにでもいるような人たちの、あるかもしれない大ピンチを好み、シュールコメディタッチの作風が特徴。
講評
=西尾武(妄烈キネマレコード)= ■総評 出場した9団体すべてに光るものがありました。 「こういう作品にしたい」「こういうのが好き」「こういう思い、考えがある」「こういうことに挑みたい」など、作品からしっかり感じました。 特に決勝戦、4団体の作品の方向性が見事に振り切れていて、その上でクオリティも本当に拮抗しており、今大会の豊かさを象徴するようで観ていてとても嬉しくなりました。 とはいえ、名劇祭は賞レースです。全国学生演劇祭への切符をかけて戦う大会です。 「みんなそれぞれでみんな良かったね」だけでは終われません。 そういう場に身を置けば、どうしたって優劣を突きつけられますし、何よりも自分自身が優劣を感じてしまうと思います。すこし厳しいことを言うなら、どの作品ももっと光らせることが出来たはずです、もっと観ている人に伝わる作品に出来たはずです。まだまだ、まだまだ磨けるはずです。 僕は賞レースというのは自分の現在地を自分自身で自覚する指標のようなものだと思っています。 自分が目指したいものを再確認したり、自分に何が足りてないかやどこが弱いかに向き合ったり、これからどうしていくかを考えたり。 勝っても負けても学びや気づきがたくさんありますし、自分の目指す面白さの経験値になります。 今大会も交流会で皆さんと話しながらそれを感じました。 この経験を経て、皆さんがどうなっていくのかとても楽しみです。 ■Aブロック ・劇団メリメロの匣 お手洗いというシチュエーションで繰り広げられる、ゆるっとしたガールズトークで展開する作品の手触りは個人的に心地よく好印象でした。メイクをしながらだらーっと喋る会話パートはすごく好きな温度感の会話でした。 ただ、全体を通して凄く勿体ないと感じたのはBGMのボリューム。もはや大きすぎてバックグラウンド(背景)ではなくフォアグラウンド(前景)になってしまっていて、その後ろで繰り広げる台詞のやりとりを観たいのにそれを妨げているように感じました。台詞のポイント、キーワードの印象付け方やアナウンスの入れ方、タイミングも気になったので合わせてになりますが、「いま何をみせたい」「どれくらい印象を深く残したい」かをもっと意識して観客を手引きするともっと作品の面白さが引き立つように感じました。 あと大きく気になった点は、中川先輩の扱い方です。中川先輩があくまで都合のいいネタバラシ要員(事情説明役)としてしか機能していなかったので、中川先輩が出てくるのであればもっと作品に広がりの出る展開が欲しかったなと思いました。 ・おかし企画 時間制限×演劇の魔力を軸に展開するのはとても面白い発想だなと思いました。 その設定をちゃんと活かすように時間や言葉遊びにまつわるシチュエーションに巻き込んでいくという構成も好印象でした。 ただ、個人的な好みではありますがタイマーは30分間ずっと出しっぱなしのままにして欲しかったなと思いました。出しっぱなしにする上で色んな障害や大変さがあると思うのですが、それと戦う様や翻弄される様も演劇の面白さだと思うので、それが観てみたかったです。 作品のキーワードとなる「30分」。きっと大会レギュレーションである上演時間30分の「30分」なんだろうというのはパンフの挨拶などから察することも出来なくはないが、作品単体として観た時に劇中で具体的に語られることがなかったので、ちゃんと作品の中で何かしらのアプローチが欲しかったです。メタ的な要素も劇中には感じたので、作品の冒頭で堂々とパンフの挨拶文に書いた一文を発しても良かったように感じます。 物事を説明されることが野暮な時ももちろんあるのですが、説明されるからこそ面白く観ることが出来ることもあります。どの情報をどういう方法、どういう流れで観客に印象づけていくか、その選択が作品の面白さを左右します。 ・劇団やるせない 俺たちを見続けろ!さあ刮目せよ!と言わんばかりの熱量が作品の内容にもマッチしていて開幕から引きつけられました。テンポ感と台詞の速度がかなり速いのにも関わらず、台詞の情報が迷子になることがなくしっかり伝わってきました。出来て当たり前のことではあるのですが、当たり前のようで難しいことを当たり前に出来ていて感心しました。 冒頭からわりと全速力、トップギアで始まるので序盤は引きつけられてワクワクするんですが、引きつけ続けないと飽きられるのと同時に観客のエネルギー管理も必要です。中盤から「20代半ば演劇人あるある」な展開になるのですが、本人たちが当事者だからこそ嘘のないベタ一直線でいきたい気持ちはよく分かるのですが、普遍的すぎて先が予見できるし分かりやすすぎるので、引きつけ続けなきゃいけない状況下においてはどうしてもだれてしまう印象でした。もっと緊張感のある空気感を演出したり、照明効果の工夫で緩和できたように思いますし、台本としてはギリギリ共感できるニッチな感覚やユーモアだったりが散りばめられていたら印象変わったのではないかなと思います。 決勝の上演は、「わがまま」な俳優たちの演技が素晴らしかったです。 ■Bブロック ・劇団翔~KAKERU~ 「風俗と社会」を描く作品で、観ている人に提示しなければいけない情報がたくさんある作品なのですが、しっかりと必要最低限提示されていたのでどういう話かがしっかり伝わってきて好感を持ちました。 ただ、30分で描くには提示しなければいけない情報が多すぎるため終始説明的な会話のやりとりになってしまったのが勿体なく感じました。特に風俗で働くエラとめいの複雑な感情や葛藤はもっと芝居から感じ取りたかったです。 時間経過だったり、風俗で働く二人と支援団体の二人の2軸で展開するので、とにかく転換が多い印象(計5回?)でした。シームレスにシーンが連続すればそんなに気になることはなかったのかもしれませんが、1回のシーンの切り替わりで20秒~30秒ほどかかっていたのでどうしても転換を挟むごとに興が削がれる印象でした。シーンの節目だったりを見ても暗転を安易に選んでいるように思えたので、暗転も演出効果だということを念頭に置いて芝居づくりするともっと没入感のある作品がつくれるはずです。 ・中京大学 劇団いかづち 弟の才能に悔しさを感じる兄となんだか終始いけ好かない弟、それを演じる2人の演技に求心力がありました。 また、舞台上に飾られたトロフィーや散乱する賞状の多さがしっかり象徴となっていて、ビジュアルでワクワクしました。 兄のモノローグから作品は始まるのですが、このモノローグで兄弟の設定であったりどんな話が始まるかの提示がしっかりされていて好印象ではあったのですが、そこから兄が循環を抜け出すまでに大きく印象が変わるようなドラマや展開がなかったのが残念でした。 兄の劣等感はもう嫌というほど提示されているので、もっと勝つための死に物狂いの努力を実際にみせるシーンだったり、双子の兄弟ということ以外の諦めず逃げずに挑み続ける(回り続ける)ことへの説得力を感じるシーンをみせて欲しかったです。 弟が人生を何周もしているという設定に唐突感があるのは個人的にそこまで大きく気にならなかったんですが、その設定によって弟の劣等感を出すなら先述のような兄のシーンはやはり欲しかったですし、何周もしているはずなのに「いつか自分を見て欲しい」という気持ちで留まって兄の死を受け入れていることに疑問を感じてしまいました。 ・劇団jobless この作品を観ながら、線が引かれることに自分自身が楽しさを感じていることに驚きました。 観終わったあとに振り返って、線を引くという行為そのものが自分がいちいち意識しないくらいに日常で当たり前にありふれた行為だということにハッとしました。まさに審査をするということも線を引くこと。このテーマ自体に底知れない可能性を感じました。 ただ、だからこそ冒頭の世界観の説明から実際に分かりやすく線を引きながら世界に没入させて欲しかったし、線を引くことで生まれる色んな感情だったり葛藤だったりを観たかったし、線を引きまくったことによって物理的に引かれた線が張り巡らされて不自由になっていく光景も観てみたかったです。 「時間に線を引く」ことに関しては村井の目的でもあるので、もう何歩か踏み込んだ説明だったり、それを目指すもっと具体的な理由が伝わるような作品になればもっと観やすくなるのかなと思います。 この世界観を作り上げるために各セクションのこだわりや工夫が見えて好感を持ちました。特に照明効果によって、見せたいものだったり空気感だったりがしっかり演出されていて、とても素晴らしかったです。 Cブロック ・ユメツヅキ 白石とその心の声たちとのやり取りの小気味よさで、茂上先輩に密かな恋心を抱きながらコンビニでバイトをするなんでもない日常をとても楽しく観せてくれました。 また俳優から発せられる言葉の距離感や誰に向かっているかが常に明確で、終始複数人で展開する会話も迷子になることなくしっかりと伝わってきてとても見やすかったです。 白石が心の声たちに背中を押されて支えられている様だったり、みんなで同調して舞い上がってしまう様だったりが健気で心温まるのですが、心の声が四人いるということの面白味や説得力がもっと欲しかったです。これは四人に明確な個性や役割が欲しかったというのとは少し違って、自分の中の少しだけ違う自分とのズレだったり摩擦のようなものが欲しかったという印象です。これは本編中に何か所かちゃんとそれを感じるやり取りはあったので、それがもっと全体的を通してあったら白石という人間の面白味や人間味がもっと広がったように思います。 あとは、現実のシーンと心の声とのシーンが交錯するような作品なので、照明効果によってもっとノンストレスな見せ方が出来たのではないかなと思います。 ・劇団はまなつ 羽の生えたヒノという男の子から始まるコンプレックスの話なのですが、ヒノに関わるヒサカワとテシガワラという二人の独特な距離感のキャラクターによって陰鬱とした暗い話ではなくてハートフルな話として描いていたのは好感を持ちました。 「羽が生えた」という非日常的な設定について、本人の抱えるものであったり彼を見る視点だったりにもっと説得力や深掘りが欲しかったです。 一番観客目線に近いのはヒサカワのように感じたので、ヒサカワがもっと観客が最初にツッコミたくなるようなところを悪意のない疑問としてズケズケと踏み込めたように思います。それに対して行き過ぎた発言に向かいそうになったらテシガワラがストッパーになるという構図は作中にもあったので、もっと設定に対するツッコミをスッキリさせて欲しかったです。 作品の後半はヒノが「飛んでみて欲しい」と言われて「羽をからかわれて飛ぶのが怖くなった」過去を思い出して思い悩むという展開になるのですが、「羽が生えた」男の思い悩みにしてはどうしても弱く感じてしまいました。そしてその悩みの先にあるものが「みんな何かしらのコンプレックスを抱えてるよ」だったので、もっとその先が欲しかったです。 ・調理部 まず、実際に目の前でチャーハン作りが始まったり、リアルタイムで撮影しているもの(カメラの映像)を投影するなど、あらゆることを舞台上で実際にやるということに挑んだ意欲に好感を持ちました。特に、炎上商法を匂わす語りの時にチャーハンを炒める手を止めて香ばしいを越えて焦げついた臭いで劇場を包む演出は、「大丈夫か?」と思わすハラハラ感や焦げついた臭いの不快感も含めて、演出効果として素晴らしかったと個人的に思います。 コメディとホラーを行き来するような面白さのある作品ではあったんですが、台本はコメディに寄りすぎている (特に前半)し、演出は冒頭からホラーに寄りすぎているバランス感覚が綺麗な揺れ動きというよりも常にどっちつかずな空気感にしてしまっていたのが気になりました。また、リアリティが欠如しているものの不条理な作品として割り切れるほどズレてもいない感じにもどっちつかずを感じてしまいました。そのどっちつかずさと冒頭からずっと不穏さを感じさせすぎてしまったがために終始観客を身構えさせ、観ている人にもっともっと刺さる作品なはずなのに他人事のようにしてしまったのは勿体なかったと思います。 =新宮虎太郎(喜劇のヒロイン)= 【総評】 審査員を務めました新宮です。観ていて、バランスがとれた団体、作品が多いなという印象を受けました。終盤に劇をまとめようとする努力は観に来る人を想定した誠実な姿勢だとも思います。納得感を持って観劇を終えることができるからです。一方でそうでなくても評価される上演作品が世の中には近頃の雨の日ぐらい存在します。良し悪しではなくどちらもあり得ますし、どちらかというとまとまっていない作品の方がいいのかもしれないです、枠に収まりきらないたくらみを抱えた作品というのでしょうか。 そしてもちろん戯曲や演技のみが突き抜けていることよりも劇世界への分かち合いを経て、全員で突き抜けようとする作品の方がやはり魅力的に感じます。そのために必要なのは戯曲に対しての各部門の積極的な関与だと思いますし、それが感じられる上演がいくつもありました。難しいのに、すごいことです。もっと観たいなと思いながら各団体の作品を興味深く楽しんで拝見しました。 どうか今後もそれぞれ持続可能な範囲で、団体として作品を作っていただきたいです。 【A-1 劇団メリメロの匣】 ショッピングモールの化粧室というシチュエーション、すごくおもしろいと思いました。誰が来たっていいし、トイレの中に人を隠すこともできる。劇中たまに聞こえる館内アナウンスも場所を活かしたよいツールでした。 一方で3人の登場人物でやりとりされるのは恋愛や憧れといった限られたコミュニティの情に関する話題になっていて、ショッピングモールの化粧室というシチュエーションでなくても良くなってしまっていたことが少し気になりました。そして、化粧室の壁や扉の機構や、洗面台に見立てた長机なども、一見すると先述のシチュエーションには見えづらく、客席の想像力に頼ったつくりに感じました。 シチュエーションの面白さを優先するのか、自分たちの手に負える範囲のシチュエーションを目指すのか、舞台上も客席も最終的に幸せになる方を選べると良いなと思いました。交わされる会話はとても楽しく観ることができました、ぜひブラッシュアップしてもらえたらと思います。 【A-2 おかし企画】 冒頭の俳優がシルエットになる絵作りをはじめ、映像を用いた配置の演出がすぐれていて、映し出される映像の質感には特有の冷たさを感じました。その冷たさと台本で描かれている登場人物の息苦しさが相まっていい影響を与え合っていました。カウントダウンが背景で行われながら面接にこたえるシーンなどとても面白かったです。 一方で、演劇作品として見た際に、どうしても舞台上の俳優を軸にして見てしまう感覚に対して、映像の存在がやはり強く、映像のないタイミングに物足りなさを感じてしまうこともありました。ほかにも、同音意義語による話題の移り変わりや場面の転換は面白いと思いましたが、文字面、意味の上で成立することと、観客のバイブスとして乗れる(成立する)ことの両方が肝だと思います。鑑賞体験としての気持ちの高まりを映像が十分に煽っている分、映像との親和性をより重視されたタイミングでそうした台詞が聞こえると、客席はもっと引き込まれるのではないかと感じました。 俳優の台詞と映像。それぞれの見せ方・聞かせ方を双方からの情報でいくらでも変容させられるという団体としてのバイタリティが非常にうらやましいです。また観たいと思いました。 【A-3 劇団やるせない】 Aブロックで一番舞台上からの圧力を感じた上演作品でした。かわるがわる立ち位置を変えながら、俳優が明確に客席に向かって台詞を発していきます。今誰が話しているかが衣装によって認識しやすくなっていて見やすかったです。俳優個々人の個性も非常に豊かで、演じながらも己の身体性と声を魅せているのだという意識が強くありました。役に頼らずに舞台に立っていて、どの俳優も華がありましたし、日々の鍛錬を感じました。演じること自体は誰にでも可能ですが、誰もが俳優になれるわけではないということを考えながら観ていました。みんなよかったです。 テンポよく早回しのような交わされる台詞は次々に言及する対象やシチュエーションを変えていくし、少ない美術を使いながら、多くの絵作りが行われており、舞台上に、飽きさせない工夫=楽しませる工夫が常にあって、誠実さを感じました。それに伴って俳優のきっかけも多くあったように感じました。きっかけの捉え方は様々なものがあると思いますが、この作品では、それが、ダンスやよさこいの振り付けに近いきっかけに感じられました。ゆえに役としても俳優としても動機のない(台詞を発しない俳優の、見せ場に向けた)予備動作が気になりました。 脚本は自虐的な部分もありながら相対的な人生への評価や後悔についてユーモアを交え語られる内容で、個人的には共感しながら、顧みながら観ていました。世の中には、劇に触れる人生を送る人と、そうではない人がいて、劇に触れる人生を送っている私たちには刺さる台詞がいくつもあったように感じました。気持ちのこもった台本で素晴らしいと思いました。 一方でこの作品のように、個人の中で育まれてきた自尊心と社会の摩擦を描かかれた話は、聞いたことのある話で終わらせない工夫や、観客により強い関心をもたせる、共感を集める工夫が必要だと感じます。そのために目の前で躍動する俳優個人を描くのも一考かと思いました。目の前の出演者たちの「実在感」のようなものが増せば増すほど切実さを持った内容となり、能動的に見続けたい作品になるのではないかと感じました。 【B-1 劇団翔~KAKERU~】 まず、劇作としてそれぞれが意思を伝えながら、誰が正しいかという視点で描かれていないのが良いなと思いました。一方で演出面では、疑似的な家族のような関係になった2人が暮らす部屋という、2人の時間をあらわす大切なシチュエーション(劇世界)を観客がのみこむためにも、布団や本棚の中身など、部屋のディテールを高められるとより良かったのではないでしょうか。 また、台本の展開は程よい間隔で物事が起こっていて関心を持ってみることができた一方で、俳優が感情をいかにぶつけるかという点で、難しい台本に思えました。思いをぶつける側にも、ぶつけられる側にも共感がしづらく、かつ、感情を移入するにはどうしても少し上演時間が短いように感じられたのが惜しかったです。仲が良かった2人がどのようにして別れていったのかという経過をあらわす俳優のがんばりを感じました。 【B-2 中京大学劇団いかづち】 賞をかけて上演を競い合うという側面が少なからずある学生演劇祭において、 トロフィーや賞状が並べられた舞台美術を含め、面白いモチーフの作品だなと感じました。 弟に勝てないという兄のモノローグは非常に期待感のある始まり方で、弟とのエピソードもユーモラスに見せられていてよかったです。 一方で、兄自身の苦しみは、時間量的に十分語られすぎているように感じました。日常と同じように、抱えている苦しみのディテールは他人に伝わりづらく、わかってもらいづらい。この作品では兄が抱えている苦しみがどれほど観客席に届けられるかが大切だと思います。結果として、兄自身の吐露よりも、兄が苦しむ要因となっている弟の態度や言動などが垣間見える兄弟の会話の方にとても引き込まれました。そして、そんな弟にも兄にはわからない事情があったことが明かされるという兄弟の認識のずれを描いた台本の構成もとても面白かったです。 ラストシーンを含め、劇世界のトーンに統一感があって台本に対する俳優やスタッフの理解が強く感じられました。 【B-3 劇団jobless】 「線を引く職業がある。」という設定が非常におもしろかったです、それだけにとどまらず実際に舞台上に引かれた線が俳優の動きに影響を与えていくのも生感があってよかったです。 一方で、「線を引く」という発想の面白さは、現実に数多くある区別や差別を想起させることによってもたらされていて、(つまり題材の面白さが劇場の外で感じることに密接しているため)線を引いているその場はどこなのか?線を引いているのはどんな人物なのか?という状況や整合性についての疑問が湧きました。短い上演時間の中で規模の大きな話を描こうとすると、その設定をどこまで語り、どこから語らないかということが非常に重要になります。作品の神秘性を保ちつつ設定の提示がもう少し優しくされていてもいいのではないかと感じました。 ただ、そうした疑問を無視しても十分楽しめる内容でした。上演時間の中で人物同士の関係性・優位性に変化があり、その変化を俳優がしっかりと演じているのも良かったです。それぞれの登場人物は魅力的に演じられており、いい意味でキャラ立ちがはっきりしていました。さらに、俳優を印象的に見せる照明の存在が効いていて劇世界を支え続けていました。ビジュアルとしての世界観の提示が非常にスムーズかつスタイリッシュで優れていて、終始ワクワクしながら見ることができました。 複数の俳優によって交代で演じられていた役については、出番の都合によるものではなく、俳優が役を兼ねることや、複数の俳優によって1つの役が演じられることに、意味や意義が感じられる必要があるように出順を構成した方が良いと思います。 興味深いモチーフと、魅力的な俳優、優れた手つきで立ち上がる劇世界といった諸要素のバランスが素晴らしい上演でした。全国学生演劇祭に向けての再創作、応援しています。 【C-1 ユメツヅキ】 コンビニで出会ったバイトの先輩との楽しい日々を過ごす私と、それを支える4人の私。 先輩とのアレコレで一喜一憂する私が、4人の私と会話をしながら、様々な意思決定をしていくという展開は、全員の言い合いや、全員が一致する価値観の出現などを温かい気持ちで見られる可笑しくて楽しい、鑑賞体験に重きが置かれた上演作品でした。 さらに言えば、私たちが日常で遭遇する悲観的な1つの局面でさえ、4人の存在を意識すれば、どのようにでも捉えられるということが示唆されていて大変勇気づけられる上演であったように感じました。4人の俳優は均一化された演技をするわけではなく、黙っているときの視線や身体の向きなどは緩めにルール化されているため、俳優それぞれの素や人となりが感じられて愛着を持って舞台上を見ることができた一方で4人があまりにも劇の展開に奉仕的な存在になることもあって、話がスムーズすぎるかもしれないとも思いました。 すでに決まっている展開に沿って行われている議論に見えないように、4人の個性や偏りを持たせるのも一考かもしれません。 【C-2 劇団はまなつ】 1回の観劇のうちに、笑っていたものを笑えなくなるという構成が含まれているのが良かったです。狙ってやっているのか。結果的にそうなっているのか、という点は棚に上げて、とにかく会話の間、意図が読めない間もあって、テンポ感が独特で印象的でした。 ただ、この台本においては、もう少し会話の間は検討されてもいいと思いました。テンポや間合いというのは、演じる側にも見る側にも一人一人の好みがありますが、まず優先されるべきは、好みではなく、間合いに対する理解の一致だと思います。どうしてその間なのか、登場人物が間をあけて、何かを言うとき「、、、」なのか、「・・・」なのか。 どうして今、間があいたのか?について、観ている人は考えます、「言いたくないことを言うかどうか悩んでいるのか」、「話を聞いていなくて返事に困っているのか」、「相手の顔を見て話そうとしていたことをキャンセルしたのか」前後の台詞や人物の所作を含めて、間合いがもたらす客席のいろんな理解があると思います。登場人物の語られない気持ちの余白と、設定が優れている分、間合いについてより考えを深めあってほしいなと思いました。 【C-3 調理部】 誰に対しても開かれているようでいながら途中から暴走し、すっかり私たちを置いていくようなユーモアが特徴的で個人的に刺激を受けた作品でした。 料理系動画配信者の撮影現場で展開される突拍子もないやりとりは、日々に忙殺される私たちにも衝動があることを思い出させてくれるくらい「なんでそんなことするの?」の連続で、劇中に話題として登場するアイテムの逸話も観ながら聞きながら観客がセルフでツッコミを入れていくことで楽しむことができます。 こうした、観客席を必要以上というかほとんど気にしない舞台側の態度は、他の団体と一線を画すものがありましたし、舞台上が自動的に進んでいくことの心地よさがありました。私自身の喫緊の課題でもありますが、劇作品は、観てもらうものから、観たい人が自らこぞって観に行くものになる必要があります。そうした将来への延長線が見えるくらい作風が確立されていました。台詞だけでなく俳優の態度・立ち方にもそれを感じました。 一方で、終盤のモノローグや語りによって示唆される「まとめのようなもの」は、そうした個性とは相反する、客席の反応を意識したものに感じられ、事態がどんどん悪化していく、「思わぬ方向へ転がっていく」というような冒険の道を閉ざされた気分でした。もっと遠くまで行ってほしい、置いて行かれたいと思いました。 一方で、語られる内容は興味深く、さらに、語りの最中に舞台上で焦げていくチャーハンと、焦げたチャーハンから立ち上る煙と匂いは非常に印象的で、台詞の意味を転換させるパワーをもった演出効果に感じました。いかにIHとは言え客席からおどろきの声が上がっていたのも、面白かったです。もちろん人を心配にさせる演出が面白いという意味ではないです。客席にいるほとんどの人が強い関心を持った瞬間が反応としてわかりやすく体感できる上演でした。 =真臼ねづみ(うめめ)= 【総評】 参加団体の皆様、実行委員の皆様、お疲れ様でした。 各団体が個性を存分に発揮されていて、完成度も高く、それぞれ熱のこもった30分間でした。 審査会や交流会でお話を伺って、なるほどと納得することもあったのですが、上演と台本から得られたもののみで講評文を書かせていただきました。 【Aブロック】 ◆劇団メリメロの匣 あらすじに書かれている設定に興味を惹かれました。舞台上で実際に制服から浴衣へと着替え、メイクをしていくという変化を見せる演出も、この作品ならではの面白さになり得るものだと思います。男性が女子高生役を演じており、(男子スニーカーが気になりましたが)自然に馴染んでいたのもよかったです。 物語が進むにつれて人物の関係性が明らかになっていきますが、ほとんどの情報が会話ベースで提供されるので、何について話しているのかを把握することが難しい場面がありました。さらに店内BGMがやや大きく、会話が聞き取りづらかったのもその要因となっていました。 特に個室で着替えている場面に関しては、音(声)のみで展開をみせる必要があり、情報を伝えることに加えて観客を飽きさせない工夫があれば、もっと作品に引き込まれたと思います。 舞台美術については、上手に置かれた長机がトイレという空間のイメージとは一脱していたこと、下手個室では中の人物が不本意に見切れてしまうことなどが惜しく感じられました。予算の都合などはあると思いますが、違和感を軽減する努力が見られるとよかったです。 この作品には、日常的な空間に非日常的な状況を描こうとする面白さがありました。舞台セット、情報の出し方、見せ方の工夫があれば、作品の深みがより増すと思います。 ◆おかし企画 制限時間が映写される冒頭は、何がはじまるのだろうという期待感がありました。シンプルな舞台セットで、次々と異なる場面を立ち上げていく構成も印象的で、場面がめまぐるしく変化していくことで、独特の世界へ連れていかれる感覚がありました。 一方で、その制限時間が何を意味しているのかが明確に伝わりにくく、どういう物語が展開されているのか把握しづらく感じました。「シンデレラ」や「灰」「エラ・肺呼吸」など、さまざまな言葉やモチーフがつながりながら展開していくのは面白かったのですが、その意味を理解するにはやや不親切だったように思います。抽象的な作品だからこそ、観客にどこまで情報を渡し、どこから先を想像に委ねるのか、そのバランスが重要になってきます。 会話のテンポについて、不要な(生かせていない)間に感じてしまうことがありました。またシーンが次々と切り替わっていく構成は大変面白いのですが、切り替えが少し甘いように感じました。俳優の演技、照明、音響、映像で、一瞬で空気を変えるくらいの切り替えができれば、より引き込まれる作品になると思います。 作品の随所に現れる感性は魅力的で、その個性はぜひ大切にしてほしいと思います。その上で、観客に何を伝え、何を想像してほしいのかを考えてみてほしいです。わかりやすくすることと、説明しすぎることは同じではありません。そのバランスが絶妙に整えば、より強い作品になると思います。 ◆劇団やるせない シンプルな舞台美術の中で、音響を使わず、俳優自身が太鼓を打つことで作品のリズムやペースをつくっていく手法が印象的でした。冒頭の第一声から会場の空気を自分たちのものにしており、俳優全員が同じ世界観を共有し、団体としての一体感がピカイチでした。 また、自分たち自身の状況・環境を作品に投影し、今の身体と感覚で創作したことが、今この作品をやる意味をより強いものにしていたと思います。 俳優の力と、集団としてひとつの作品を創る団体力がしっかりと感じられる作品でした。 一方で、登場人物は台本上ではそれぞれ異なる特徴がある存在のようでしたが、その違いがあまり感じられず、俳優それぞれの個性のみで区別されているようでした。俳優の演技力や求心力は高かっただけに、役としての存在の違いが明確になれば、作品の世界にもさらに奥行きが出たように思います。 また、作品全体を通して同じ調子が続くため、後半にかけて少しマンネリ化する印象もありました。作品のスタイルを個性として大切にしながらも、飽きさせない工夫やバリエーションが見えたらよかったと思います。 【Bブロック】 ◆劇団翔〜KAKERU〜「結んでひらいて」 センシティブな題材を選定し、真摯に向き合い創作されたことを評価したいです。設定や物語の展開もわかりやすく、登場人物たちが置かれた状況を観客が無理なく追える作品でした。 一方で、舞台上のいくつかの表現に、作り手の都合が感じられる表現がありました。そうした小さな妥協は、作品のノイズとなり、観客の気持ちが物語から離れてしまうきっかけになります。 特に気になったのがお酒です。後半で「エラはお酒を飲むふりをしていた」という描写がありますが、実際には2人とも飲む演技をしていたので、その伏線が十分に機能していませんでした。 予算や劇場、人員などの制約によって実現が難しい表現もあると思います。しかしそれは観客には関係のない、作り手の都合です。そこで諦めるのではなく、別の方法やアイデアで補おうとする姿勢を大切にしてほしいと思います。 また、暗転の多さが気になりました。暗転が絶対ダメということはありませんが、観客にとって暗転は一種の休憩のようなもので、そこまで積み上げたものが少なからず途切れてしまいます。転換方法は暗転以外にもたくさんあるので、ぜひ探してみてください。 俳優の演技については、感情や状況を観客に届けることが第一の目的になっているように感じました。会話劇においてより大切なのは、まず相手役に届けることです。人物同士のやりとりで生まれるものから観客は何かを感じとります。 「演劇はこういうもの」という思い込みや常識にとらわれず、さまざまな面白い表現に触れてみてほしいと思いました。 ◆中京大学劇団いかづち 賞状やトロフィーで埋め尽くされた舞台美術は、これから何が始まるのだろう、という期待を持たせてくれました。 また、冒頭の世界観提示がうまく、開始数秒で作品に引き込むことに成功していました。他団体の後に上演するこのような演劇祭において、とても重要なことだと思います。 作品全体としては、大部分がモノローグによって進んでいくため、「頭で理解する」ことに偏ってしまったように感じました。兄の心情や兄弟の複雑な関係性などは、言葉によって非常にわかりやすく伝わりました。しかし、わかりやすいからこそ、観客が想像し、心で感じる余白が少なくなっていました。モノローグそのものを否定するものではありませんが、情報として「わかる」だけでなく、観客が「感じる」ことのできる場面が増えると、この作品はさらに強いものになると思います。 一方で俳優のモノローグは、エネルギーと集中力が終始途切れることなく、言葉を届け続ける力があり、モノローグ中心の構成を成立させていた点を評価したいです。 後半で明かされる「弟は人生を何周も繰り返している」という設定には、唐突さを感じました。台本には伏線とも受け取れるセリフがいくつかありましたが、あまり目立たなかったため、伏線としてうまく機能していなかったように思います。 弟もまた、兄と同じようにコンプレックスを抱えていたという構造は面白いので、その設定を唐突に感じさせない仕掛けがあれば、より面白い作品になるのではないかと思いました。 ◆劇団jobless 抽象的な舞台美術と、冒頭のモノローグによる世界観の提示がわかりやすく、すぐに作品の世界に引き込まれました。また、主要な役を演じていた方が作・演出も担っていることを終演後に知り、驚きました。演出家の出演は浮いてしまうことが多々ありますが、それを全く感じさせなかったのは凄いことだと思います。 その一方で、作品の中にある面白いアイデアが、やや控えめに見えてしまったことが惜しく感じられました。言葉遊びを使った演出がたびたびありますが、あまり印象に残りづらく、後半になるにつれて減少していきました。地面に写る映像もやや見えづらく勿体無い印象でした。 また、舞台上で実際に境界線を引いていく演出は、視覚的に変化していく体験がとても面白いのですが、だからこそ、その変化をもっと極端に見せてほしかったです。 “黒いもの”については、抽象的な存在でありながら、素材(材料)が容易に想像できてしまったことで、現実感のある物体として見えてしまったのが惜しく感じました。 設定や世界観、俳優の演技、スタッフワークを含めて、しっかりと作品を成立させる力のある団体だと感じました。全体として綺麗にまとまっているからこそ、この作品の特徴をそれぞれもっと濃くしていけば、この団体にしかつくれない独特のインパクトを持った作品になるのではないかと思いました。 【Cブロック】 ◆ユメツヅキ 誰もが共感しやすいストーリーに加えて頭の中(4人)の存在がコミカルで、展開もわかりやすく観やすい作品でした。 一方で、4人の役割や性質にはそれほど大きな違いが感じられず、4人である必然性は感じられませんでした。人数のバランスとして4人がちょうど良いという感覚もわかりますが、そこに意味があれば、作品の強度がさらに増すように思いました。 箱馬の変化による場面転換は、非常にシンプルでわかりやすかったです。 照明については、現実シーンと内面描写シーンの表現が、一般的にイメージされるものとは逆で使われていた印象で、アクティングエリアによるものかと思いますが、他に最適な表現があったのではないかと感じました。 この作品では、頭の中の声を人物化するという演劇的な表現が特徴ですが、それを含めても、比較的見慣れた設定という印象がありました。もちろん、わかりやすく共感しやすい作品であることは、多くの観客に届く強さでもあると思います。一方で、これは私の好みによるところですが、独自の視点や感性による表現、団体ならではの何かが見たかった、というのが率直な感想です。 ◆劇団はまなつ 設定がかなり面白いです。最初はファンタジーとして、自分とは関係のない世界の出来事として観ていたものが、羽は「人と違うこと」や「自分のコンプレックス」の象徴なのだと気づかされ、思わずハッとさせられました。非日常的な設定を、身近なテーマへと転換する構造が秀逸でした。 一方で、演劇として立ち上げる技術の面では課題を感じました。 会話のテンポがゆったりと一定で、台詞と台詞の間に不要な間が多く、観客としては焦ったく感じました。シュールな雰囲気というには、間が悪かったように思います。台本の分量から見ても、上演時間は15〜20分程が適していたのではないでしょうか。 また、物語展開のために少し無理に台詞や行動をつないでいるように感じられる箇所もありました。設定が非常に魅力的だっただけに、それを演劇としてどう表現していくのかという部分で、まだ伸びしろがあるように思います。今後を楽しみにしています。 ◆調理部 舞台一面に敷かれたブルーシートの大胆さから、これは演劇の定型にはまらない作品だろうと期待させられました。実際、舞台上での料理、リアルタイムの映像配信、少しずつ現実からズレていく独特の世界観はとても印象的でした。特に、チャーハンが焦げるまで放置できる度胸と感性には、嫉妬と感心をしました。 一方で、やりたい表現を優先するあまり、設定の整合性が置き去りになっているように感じる場面もありました。YouTube撮影現場という大前提がありながら、撮影進行に前向きな人がいない、手持ち撮影、カンペの短さ、荷物開封からの食事、など。そういったナゼ?が、展開を素直に受け入れることを邪魔していた気がしました。自由な表現を成立させるためには、作品で提示した設定やルールを無視せず、説得力を持たせることも必要だと思います。 またこの作品には、観客に「伝える」ではなく「わからないならいいです」と言われているように感じる雰囲気があり、それが鼻につきつつもカリスマ性も感じ、観劇から数日経った今でも誰かと議論したくなるような、記憶に残る魅力的な作品でした。 今後、その感性でどんな表現を生み出していくのか、とても楽しみです。